Rain shadow─偽りのレヴェル─
消えかけた名前
今日の1日は、蛇島 瀧のことを考えて過ごしてしまっていた。
クラスメイトのほとんどが真面目に参加していない授業中も、教師が手にするチョークが残りわずかなことに気になりつつも。
赤矢と賑やかに過ごす休み時間も授業の合間も、どこかわたしは瀧のことが必ず頭にあって。
『今日の放課後…時間を作ってもらえませんか。あ、ふたりだけで、』
そんな改まったお願いは初めてだったから、もちろんわたしは迷うことなくうなずいた。
鬼木のことだろうか、翠加さんのことだろうか。
それとも学校生活のことだろうか、家で何かあったんだろうか。
『は、話したいことがあって、……いえ、』
なにかを決心したように、彼はわたしをまっすぐ見つめてきた。
『あなたに伝えたいことがあるんです』
見たこともない顔をして、熱のこもった眼差しで、わたしから逸らすことなく凛と言い切ったから。
どうしたの?なんて、軽々しく聞けるわけもなく。
まだかまだかと放課後を待ちつつも、もう少し1日が長ければいいのに…とも思って。
「それにしても……もう残り1ヶ月切ったんだ…、」