Rain shadow─偽りのレヴェル─
そんなわたしの顔が面白かったのか、珍しいものが見れたと喜んでいるのか。
久しぶりに顔を合わせた久遠 綾都は骨格を引き上げながら近づいてきた。
「最近ぜんぜん顔合わせらんなくて呼べてなかったから」
だから呼びたかった、なんて。
それはどんな殺し文句なの。
なにしても絵画になってしまうひとが絶対に言ってはいけないセリフだ。
「それより俺の生徒手帳とかって拾ってたりする…?」
「生徒手帳…?見てないけど…」
「そっか、ならいい」
わたしの本名をあんなにも堂々と呼んできたことよりも、生徒手帳を落としてしまったことのほうが彼にとって一大事らしいのだ。
それくらい焦ったように冷や汗を垂らしながら聞いてきた久遠くん。
ぜったい基準まちがってるよ……。
「もし落ちてる生徒手帳拾っても、中身はぜったい見るなよ」
「え、でも見ないと届けられないから、」
「それは確実に俺のだから。……くそ、誰かに拾われてたら最悪だ、」
どうやら久遠 綾都にとって生徒手帳というものは、それほどまでに大切なものらしいのだ。