Rain shadow─偽りのレヴェル─




ちなみにわたしも一応持っている生徒手帳はもちろんお兄ちゃんのもので、とくに面白味もない無表情な顔写真が載っていた。


落とすとそこまで困るほどの生徒手帳って、逆に興味が湧いてしまう。

一応あたまの片隅に入れておくとして、それよりもわたしは最近ずっと忙しそうな彼のことがいつも気がかりだった。



「…いろいろ動いてくれてるって聞いたよ。きっと鬼神のこととかで大変、なんだよね…?」



鬼木は危ないクスリを使うらしいのだ。

だからどんなものを使っているのかを調べたり、周りとの関わりを調べたり。


情報を集めることはイコールで仲間のためを思う行動だと、佐狐は言っていた。

戦いにおいていちばん大切なのは敵を知ることだって。



「さすがに最低限の情報収集はしとかないとだしな。これでもまだ足りないくらいだけど」



ありがとう、ごめんね。

どちらを言えばいいか迷ってしまって、視線を落とした。


わたしは……なにもできない…。

命令をするだけで、みんなが守ってくれる高い場所から見ているだけだ。



「…深雨、」


「っ、」



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