Rain shadow─偽りのレヴェル─




すると何を思ったのか、少し強い力で引っぱられて腕のなか。


ここはアジトでもないし、完全にふたりきりとも言えないのに。

構うことなく抱きしめてくる。



「大丈夫。…必ずぜんぶが上手くいく」


「…ぜんぶ…?」


「あぁ。お前がまだ知らないことも……でも絶対、大丈夫だから」



なんのことを言ってるんだろう。

彼はわたしの復讐のことだって知らないはずなのに。



「当日おまえは安全な場所に匿っておく。だから…心配しなくていい」



彼はきっと、わたしがお兄ちゃんの代わりになってまでこの高校に来た理由は、

“お兄ちゃんが作ったRain shadowを見たいだけ”だと思っているだろうから。


そうじゃない、それだけじゃないの。

それだけじゃないんだよ久遠くん。



「ううん、わたしも戦う。……わたしは“爽雨”でもあるから、」


「…なら、俺から離れんな。ぜったい俺が守る」



瀧もいつもそう言ってくれる。

わたしはもう十分まもられているのに、それじゃ全然足りないって言ってくるみたいに。


こうして抱きしめてくれるのは久遠くんだけじゃなく瀧もで、彼らはどんな思いを抱えているんだろう。



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