Rain shadow─偽りのレヴェル─
それでも瀧と久遠くんの腕から伝わってくるものは全然ちがった。
瀧は、あの子は、どこか心にとてつもない後悔と恐怖を常に抱えていて、それ以上に。
誰かに対する、このうえないくらいの復讐心を抱いてるんだ。
それがわたしと似ているから痛いくらいに伝わってくる。
「…くおんくん、」
「ありがとう」と素直に言いたいのにどうしてか言えなくて、腕の安心に甘えるように身体を寄せた。
「……アジト、いく?」
「え…?」
「もちろんベッドのほう」
「……えっ!?行かないよ…!あんなところもう2度と行かないっ」
まったくちがう危機感が生まれて、ぐいっと無理やりにも身体を離した。
なのに背中には腕が回されているから、これじゃあ離れたんじゃなく緩まっただけ。
「深雨、」
「っ、や…、」
どうしてそんなに甘い声が出せるの、そんなに熱く見つめることができるの。
そのまま顔を近づけてこようとするから、咄嗟に逸らしてしまえば今度は顎をくいっと持ちあげられる。
「…嫌?」
何度か重ねていたとしても、あんなものは慣れるほうがおかしい。
今までは勝手に強引にも奪われるばかりで、こうして聞かれたのは初めてだった。