Rain shadow─偽りのレヴェル─
「あ、そういえば前に教えた新しいメンバーがいるんです。ちょっと代わりますね」
「えっ、え、」
ほら、と。
黒色のスマートフォンがなぜかわたしに渡された。
出ろってこと……?
初対面どころか対面すらしてないのに…?
カノさん?っていう名前しか知らないよ、わたし……。
「えっと、…もしもし……?」
とりあえず待たせるのも悪いから受け取ってみた。
雑踏と排気音、聞こえてくるのは落ち着かない音。
はっ、はっと、なぜか走っている息づかいと共に。
『あ、はじめまして、水本くんの双子の妹なんだってね』
「えっ、知ってるんですか…?」
『知ってる知ってる。僕らに盗めないものはないから。あーっと、ちょっとまって、』
ガゴンッ!!
なにかを倒したような音が聞こえる。
それからタタタタッと数人の足音まで。
『水本くんとは2回くらいこっちで会ったことがあるんだ』
「…そう…だったんですか、」
『依頼料が高いってケチつけてきたからよーく覚えてるよ。僕たちの仕事の危険性をまったく分かってないんだから』
「は、はあ、」
『あっ、こらナンバー5!そっちの裏通りは危ないって教えたでしょ?』