Rain shadow─偽りのレヴェル─
「殺す」という言葉を聞いて、思い出したのは兄の日記だった。
殺されたんだ、わたしの兄は。
殺された……殺されたの、自殺なんかじゃない。
「わ、ごめんごめん。長くかかる大怪我って聞いてたからさ、
こんな早くに復活するなんて俺だって驚いてるんだ。そんな怖い顔しないでって」
「…2度と言うなよ」
「うーん、それは無理かな」
無言の時間が流れた。
早く教室へ行きたいだけだったけど、新たな情報が掴めるならそれはそれでいい。
口調だって変えなくちゃ。
女だと怪しまれないくらいの威厳を出さなくちゃ。
「だって俺、潰したいんだもん」
「…なにを」
「Rain shadowを」
こいつか───と、思ったときにはわたしの首に回されていた腕。
どっちだ、烏のほうか狐のほうか。
このお祭りで売っているお面のような気持ち悪い笑みは、狐だろう。
「っ、はなせ、」
「んー、やっぱなんか弱くなってない?前からチビだとは知ってたけどさぁ」
「はっ、はなして、」