Rain shadow─偽りのレヴェル─




初めてじゃないかって思うくらいの優しい顔をしていたから、わたしは彼にとんでもなく最低な言葉を言ってしまったのだと。

自分で自分を呪いたくなった。


はっと意識がだんだん戻っては、ぐらっと余計に視界が歪んで頬に伝う量は倍となる。




「─────…深雨さん、」




消さなくちゃいけないと。

爽雨としてやるべきことを果たさなくてはいけないと。

そのために捨てなければならなかった名前が、またこうして引き戻される。


消えたくないと泣きながら、それでも消えかかっていたわたしが戻ってくる。



「あなたのことは泣かせないと、おれは爽雨さんと約束したんです。
だからおれはあなたをこんなにも泣かせたあの人にすごく腹が立って…、気がおかしくなりそうなんですよ、」



それまでずっと巻いていたマフラーを外して、わたしの首に同じように巻かれてゆく。


ふわっと、少し季節が早めのぬくもり。


鱗を剥がしてもまた鱗。

目の前の鱗模様は、やっぱりわたしには格好いい刻印に見えた。



「ぼくは、ぼくは爽雨だ……、」



ピタリと、マフラーを巻いてくれる動きが止まった。



「僕はここに生きてる…!爽雨は…ここにいる…っ、」



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