Rain shadow─偽りのレヴェル─
なにも反応できないまま、すぐ近くで熱い息が落ちてくる。
「……っ、!!」
勢いで、合わせてみた───、
説明するなら、そんな動きだった。
「っ…、」
それは弟のようだった後輩とするには、ちょっとだけ恥ずかしくなってしまうもの。
焦ったように、切羽詰まらせるように、けれど味わって重ねてくる。
ずっと我慢していたものをぶつけてくるみたいに激しく、だけど毒蛇にしては優しく、ぎこちなく慣れていない動きで。
「……っ、は、」
たまに聞こえてくる吐息混じりの甘い声。
ぜんぶ、ぜんぶ隠してしまえばいいよ。
忘れてしまえばいいよ。
あなたは何もしなくていいんです。
おれがあなたの代わりにすべてを終わらせますから───。
もう何も分からないなかでの柔らかさと、そう聞こえてくるキスを、わたしはただ呆然と受けていた。
「っ、…んっ、」
さすがに冗談でも男とは言えない声が隙間から漏れてしまうと、もっとそれは激しくなる。
そのたびに涙が溢れて、今にも甘さはしょっぱさが消してしまいそうなのに、それを消すものかと重ねられて。
「……なん、で……、」
離れたとき唇の表面がキラキラと輝いているから、それくらいのものを重ねていたのだと実感する。