Rain shadow─偽りのレヴェル─
「でもこれだけは言い切れる。───翠加は爽雨に惚れてた」
久遠 綾羽は、わたしを優しく抱きしめた。
ナイフを突き出したような女を。
自分を殺そうとした女を。
どうしてそんなことができるのって、泣くことしかできない自分が悔しい。
「お前が朱雀に来た理由がどうであれ、久遠 綾羽と久遠 綾都の両方に会いたかったって言ってくれたの……すげぇ嬉しかった」
「っ…、わたしは…、わたしはっ、」
「いいって、もう。俺も許すからお前も俺を許せ」
許せって……、
話を聞くかぎり、誰がどう見たってあなたは何もしていない。
殺せなかった。
わたしは久遠 綾羽を殺すことはできなかった。
甘い唇が全身に落とされてゆくなか、せめてこれだけはと言い放つ。
「…わたし、瀧とキスした。結構すごいのしてる、」
「……は?」
「瀧は、わたしのことを心から愛してるって、」
「ふざけてんな」
いやふざけてはない。
あれは女の子がイケメンに言われたい言葉ベストワンだ。
それに誰かに愛を伝える気持ちは素晴らしいものだから。
「さすがにそれは許せねぇわ」
「許してもらおうと思ってない。だって…うれしかったから、」
「ねえ、ほんと襲われてぇの」
「……もう半分されてるよ、」