Rain shadow─偽りのレヴェル─




そのままだった。

わからない。

仲間として好き、男の子として好き、
この人よりも好き、あの人のほうが好き、


その区別がまったくと言っていいほどに、わからないのだ。


それはわたしが“男”として生きているから。



「いまのわたしは“男”だから…、そういうのはぜんぶが終わるまで封印してる、だから今は…わからないの、」


「…ってことは、瀧が特別とかではないんだな」


「赤矢も佐狐も、霊池先輩も……久遠くんも、瀧も、みんな大切な仲間で、好きだよ」



不器用で、けれど精いっぱいな気持ちはどうにか伝わってくれたらしい。

すべて解決したとき、その形は少しずつ変わっていくんだと思う部分はある。



「だとしても、そのなかでも俺を選べよ」



鬼神との決闘は、ただの抗争じゃない。

Rain shadow、お兄ちゃん、久遠くん、瀧、翠加さん、そのすべての謎が明かされる決闘だ。


ぜんぶ終わってはじめて、久遠くんの気持ちも瀧の気持ちも、わたしは正面から改まって見つめることができる。


そして彼が次に放った言葉に、わたしは声をあげて泣くことになるなんて。




「……爽雨は…、────……生きてる、」




どんな意味が込められているものなのか、ひとつも理解できなかったけれど。

もうこんなことしなくていいと。

やさしく、やさしく諭(さと)されたような気がして。


わたしはもう許された気がして、泣いた。



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