Rain shadow─偽りのレヴェル─




瀧がすぐに向かっていったのは、その場所を分かっているからだ。

鬼木が深雨を拐っている場所など簡単に検討がつくからだ。



「にしても瀧はあいつバイク乗れへんやろ。走って行ったんか」


「赤矢、瀧の走力とスタミナやばいの忘れた?ウワサを聞きつけた海外のプロからスカウトかかってるくらいだから」


「あーー、せやったな。さいあく下っぱ呼ぶこともできるし心配せんでええか」



ブォォォンッとエンジンをかけながら、免許を持っているふたりは久しぶりに乗るバイクを慣れた手つきで状態確認。


革製のグローブとゴーグルを装着した赤矢は、乗れないひとりがいることを思い出したように顔を向けてくる。



「つーか、綾都はどっちのケツ乗るん?」


「……酔わねぇほう」


「なら俺だね綾都くん」


「遼成、安全運転で頼むぞ。死にたくねぇ」


「はははっ、これが最高司令塔だなんて笑っちゃうよ。…悪いけどスピードは出すから」



笑っているが、緊張が走っていた。

「ほな行くで」と、アクセルを握った赤矢は先に飛ばしていく。


向かうは翠加が殺された、暗ったるくて湿気だらけの倉庫。


あんな最悪な日は、もう繰り返さない。



『俺のなまえ…実は綾都じゃないんだ、』



どんな反応をしてくれるかと、怖かった。



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