Rain shadow─偽りのレヴェル─
俺たちに嘘ついてたのか?
なんで言ってくれなかったんだ?
そう言われるんじゃないかと、俺は初めてできた2人の友達を前にして怖かった。
『アヤハって…言うんだよ、久遠 綾羽』
両親には誰だとしても絶対に言うなと言われていたけど、ここでも俺は小さな反抗をした。
そんな俺に、ふたりの友達は笑顔を浮かべていて。
『綾羽…!!かっこいいっ!ねぇ爽雨くん!』
『うん、いい名前だ。じゃあお前は名前が2つあるってことだな綾都。いや…綾羽か』
どうして本当の名前を隠してるの?
なんてことは1度も聞かれなかった。
そんな奴らだから、俺は話したんだ。
『うんうんっ!それってさ、いざというとき使えるよね…!』
いざというとき、使える───。
翠加のそのときの言葉がすべてだった。
だから爽雨、あいつはお前のことが好きだったんだ。
鬼木に捕らわれて、最後に俺に助けを呼んだんじゃない。
Rain shadowを救いたかったから、俺たちにしか通じない“アヤハ”を使ったんだ。
それを俺は聞かされてから後々になって理解した。
あいつは、翠加は、お前と同じ気持ちだったんだよ───…。
「綾都くん平気?落ちないよーにね」
「……吐く、」
「え…っ!?俺の背中にだけはやめてよ!?」
ふわっと鼻先をくすぐるキンモクセイの香りに、なんとか助けられた。
*