Rain shadow─偽りのレヴェル─




俺たちに嘘ついてたのか?
なんで言ってくれなかったんだ?

そう言われるんじゃないかと、俺は初めてできた2人の友達を前にして怖かった。



『アヤハって…言うんだよ、久遠 綾羽』



両親には誰だとしても絶対に言うなと言われていたけど、ここでも俺は小さな反抗をした。

そんな俺に、ふたりの友達は笑顔を浮かべていて。



『綾羽…!!かっこいいっ!ねぇ爽雨くん!』


『うん、いい名前だ。じゃあお前は名前が2つあるってことだな綾都。いや…綾羽か』



どうして本当の名前を隠してるの?

なんてことは1度も聞かれなかった。
そんな奴らだから、俺は話したんだ。



『うんうんっ!それってさ、いざというとき使えるよね…!』



いざというとき、使える───。

翠加のそのときの言葉がすべてだった。


だから爽雨、あいつはお前のことが好きだったんだ。


鬼木に捕らわれて、最後に俺に助けを呼んだんじゃない。

Rain shadowを救いたかったから、俺たちにしか通じない“アヤハ”を使ったんだ。

それを俺は聞かされてから後々になって理解した。


あいつは、翠加は、お前と同じ気持ちだったんだよ───…。



「綾都くん平気?落ちないよーにね」


「……吐く、」


「え…っ!?俺の背中にだけはやめてよ!?」



ふわっと鼻先をくすぐるキンモクセイの香りに、なんとか助けられた。








< 279 / 364 >

この作品をシェア

pagetop