Rain shadow─偽りのレヴェル─
「院長…!綾都くんのお友達が…っ!」
それから救急車で運ばれ、深雨を医療担架に乗せて大きな病院の裏口から院内へと移動するなか、その男は向かってきた。
すでに連絡は通っていたのだろう。
父親とは思えない冷たい目で、ただ医者としての建前だけで俺を射抜いてくる。
「…助けてください、俺の…俺の大切な人なんです、」
俺はたとえ何を言われたとしても、深雨を救うためならなんだって覚悟していた。
爽雨のときと似たような光景に、同じ記憶を思い出しているのは彼もなんだろう。
それでも背中を向けてしまう男。
「───父さん…っ!!」
その足が、俺から咄嗟に放たれた一言に止まった。
目を見開いたのは同行していた瀧。
そうだ、この病院の一人息子があんな不良高校に通ってるなんて笑えるだろ。
「……俺の、友達なんだ、」
お父さん、ぼくね、学校すごく楽しいよ。
この人たちがぼくの大切な友達なんだ───。
小さい頃だって、そんなふうに父親に紹介したことなんかなくて。
だから17歳になってようやく初めて投げかけた息子としての会話だった。
「待ってください院長…っ、まだ息はあります、解毒処理ができるのは院長だけなんです……!!」