Rain shadow─偽りのレヴェル─
「ひゃ…っ」
耳元に熱い吐息がかかって、ピクッと肩が震えてしまった。
その声にだってとくに驚きもしないのは、彼だからだということ。
それをわたしは数秒後に理解する。
「…ちなみにあいつは“僕”じゃなく“俺”ってずっと言ってたけど」
「っ…!!」
「でもお前はそれでいい。俺はそっちのが好きかも」
「なっ、僕っ、僕は…っ」
どう誤魔化そう…っ、
たとえ双子だったとしても、親友だった彼には最初からお見通しだったり…?
「さっきの、格好よかったじゃん。…ようこそ、不良だらけの朱雀工業(すざくこうぎょう)高校へ」
「よ、ようこそって……、ぼくは、」
「水本 深雨───だろ?」
なんと、この男にはわたしの正体がバレてる……みたいで。
やっぱり侮(あなど)れない。
この学校を牛耳る最高司令塔である男の目とやらは。