Rain shadow─偽りのレヴェル─
俺はもう、泣いているのか笑っているのか、自分でも分からないままに向かっていた。
けれど川を渡ろうとした寸前、とんっと跳ねるように俺のほうに来てくれる。
『翠加……っ!!』
『わっ…!爽雨くん、くるしいよっ』
どうして俺はこんなにも簡単なことが向こうではできなかったんだろう。
あんな最後なら、もっとこうしてたくさん抱きしめればよかった。
たとえ俺のことを見てくれてなくても、そんなのどうだっていい。
『ごめん…っ、ごめんな、ごめん、っ……、ごめん……っ、』
『…爽雨くん、』
『守れなくて、ごめん……っ、弱くてごめん、痛くて苦しい思いさせてごめんな…っ、』
足りない、まだまだこんなのじゃ足りない。
謝っても謝っても足りないのに。
変わらない姿で、いつも着ていたセーラー服で、大好きだった笑顔で俺を受け止めてくれる。
『爽雨くん、一緒に日向ぼっこしよう?』
『…ひなた……ぼっこ……?』
『うんっ!ここね、すっごくお日さまが気持ちいいの!』
彼女には口癖のようなものがあった。
“一緒に”と、何かしようとすると決まって言ってくる。
昔からそうだったと、そんな姉を持った弟は俺に教えてくれたことがあった。