Rain shadow─偽りのレヴェル─
『わ…っ、重くない…?爽雨くんチビだからつぶれちゃわない…?』
『…うるせーよ。俺のほうが7センチもでかいから』
お姫様抱っこだけじゃなくて、たくさん抱きしめてキスをして、手をつないで。
好きな女の子へ誰もが思う感情は、俺だって持っていた。
柔らかくて涼しげな芝生に腰を落として膝のうえ、ぜったい落とさないように抱える。
ぎゅっと抱き寄せてみると、ずっと触れたかった柔らかい髪が俺の頬を撫でた。
『…すきだ、俺はおまえが…好きだ、』
『…うん、知ってるよ』
『別に綾都が好きだっていい。…本当はずっとずっと言いたかった、』
『……』
思い出す。
こうして翠加を腕に抱いたのは初めてじゃないって。
ボロボロな姿で目を閉じつづけるお前に、俺は今みたいなことをして、今みたいな気持ちを伝えて。
『私…、爽雨くんが好きだよ…?』
『……いいよ、気はつかうなって』
『えっ!つかってないのに!!』
『…いいって、ほんと、』
ここは優しい場所だ。
なにも気にしなくてもいい世界だから。
ふわふわしていて、柔らかくて、できるならずっと居たい。