Rain shadow─偽りのレヴェル─




ポカポカと痛くもない攻撃。

拗ねているのか怒っているのか、それすら照れ隠しなのか。


流れるようにぽすっと、背中から倒れこんだ。

柔らかい草たちがクッションとなってくれて、俺のうえに乗る女の子の重さでさえ愛しく思わせてくれる。



『…翠加、』


『うん、』


『すいか、』


『ふふ、なあにっ』



何度、何度、こうして名前を呼びたかっただろう。

やっと正面から呼べたと思ったら返事が返ってこない、あんなにも悲しい現実のなかで。



『爽雨くん、そうくん、』


『……かわいい、』


『私のことっ?』


『…当たり前だろ』



やっぱりこっちのほうがいいと、ぐりんっと体勢を変えた。

『わっ…!』と、これまた可愛い反応が聞こえる。


俺のうえに乗ってくれるのもいいけど、やっぱり男としては好きな女の子に1度でも覆い被さりたいものだ。



『…重くないか、』


『…うん、』



コツンと、おでこをくっつけてみる。

照れたようにはにかんで、ニヒヒッといじわるに笑う翠加。


あぁ俺、こいつのこんな顔が大好きだった───…。


気づけばポタリポタリと止めどなく落ちるから、その涙を受け止めるように翠加は俺の頬を撫でてきた。



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