Rain shadow─偽りのレヴェル─




『爽雨くん…?どうして泣いてるの…?』


『っ…、わかんない、わかんないけど、』


『うん、』


『ここは……幸せだなって、』



お前にとっても、俺にとっても。


苦しみだって痛みだってない場所なんだ。


翠加は幼いとき、母親から虐待を受けていたと話してくれたことがあった。

そのため恐怖心が普通の女の子より少しだけ疎いから、あんな不良だらけの高校に平気で入ってきたりして。


そんな母親からの暴力だって、この世界では気にもしなくていいんだ。



『ごめんな翠加、ごめん、ごめん…っ、』



もう、それしか言えない。

親から虐待されつづけて苦しい思いばかりしてきたのに、最期すら残虐な思いをさせた。


どうしてこいつだったんだって。

こいつが何をしたんだって、こんなに無邪気に笑う女の子なのに…。



『爽雨くん聞いて。私が爽雨くんを好きになった理由はね…?』



ぼやけて震える視界のなか、愛して止まない笑顔だけは映すことができた。


もう取って付けられた理由だっていい。

なんだっていいから、この夢みたいな空間に甘えることにした。



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