Rain shadow─偽りのレヴェル─




いるのか……?

俺を囲ってる、のか…?



「深雨さん、今日の花はピンクの胡蝶蘭です」



ふわっと、俺にも届いてくる香り。


その声を耳にするだけで懐かしくて、閉じているまぶたが震えてしまいそうで、俺はお前に謝りたかったんだって。

そんなことを思い出した。



「うわー、それ花言葉しってる?」


「……」


「あ、知ってるねこれは。重すぎるよお前。まさか毎回そうやって意味を伝えてたりするの?」


「……だったらなんですか、」


「殺気やば。まったく深雨ちゃん愛されてるねぇ」



深雨……?
深雨もそこにいるのか……?

おまえも俺の近くにいるのか…?



「んじゃ、俺ちょっとナースさん口説いてくるから」


「ほんならオレもジュース買うてくるわ」



しばらくすると「やっと静かになった…」と、残ったひとりはため息を吐く。

そんなことを言うようになったなんて、俺が知ってるより生意気だなと思って笑いたくなった。



「…姉さんは爽雨さんを離さないのかな、」



だから爽雨さんはなかなか目を覚まさないのかな───。

なんともそいつらしく、かわいいつぶやきだった。



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