Rain shadow─偽りのレヴェル─
早く駆けつけてやらなきゃ。
はやく、はやく、助けにいってやらなきゃ。
けれどその妹の涙はまるで、こうして俺が駆けつけようとしていることを喜んでいる涙なんじゃないかって思えてしまった。
「……はー………、はーー………、」
ゆっくりまぶたを開く。
久しぶりに目にする太陽の光。
仰向けの身体は固く、重く、せめて動かせたのは指先だった。
取り付けられた酸素マスクのなかでひとつひとつ深呼吸するように小さな声を乗せた。
「……、」
なにかを感知したのか、震える背中はゆっくり振り返った。
相変わらず室内でもマフラーしてるんだな…おまえ。
─────パリンッ。
床に落ちた花瓶、飛び散った水。
「……た……き…、」
「っ、ぁぁ…っ、ぁぁぁ……、」
ふらふらと今にも転びそうな足取りで向かってくる。
無数の涙をポロポロ落として、俺が眼差しをゆっくり伸ばせば余計に増えて。
「───…爽雨さん……っ!!」
お前の声、聞こえてたよ。
ずっとずっと聞こえてた。
俺たちがいつも学校で話してたように、毎日ここにきて話してくれてただろ。
俺もお前にたくさん謝らなきゃいけないことがあるし、話したいことがあるんだ。