Rain shadow─偽りのレヴェル─




変わらず笑いかけると、マフラーで隠すことをせず、病室だからと遠慮もなく。

瀧は子供のように泣いた。



「みんなも…ごめん……、」


「…なにらしくねぇ顔ばっかしてんねん。お前はチビのくせにスカして格好つけてんのがお似合いやわ!」


「そうそう。でも、これからはそこに“心”が加わるんじゃない?」


「にしても水本、双子ってこんなにそっくりなのか……、ぜんぜん分からなかった」



久しぶりに笑いあった。

俺のなかの記憶は、みんながそれぞれ険しい顔をして背中を向け合ったところで止まっていたから。


そして残るは、俺を救ってくれた親友。



「綾羽……、俺がまちがってた、…ごめん」


「…許さない。退院しても俺の親友として参謀に戻ってくれなきゃ…ぜったい許さねぇから、」


「…もちろんだよ、」



涙が溢れる。

生きていることが、うれしい。

こうしてまた仲間たちに会えたことが、俺はうれしい。



それなのに、


俺が嫌いな雨は、まだ降りつづいていた。




「……、……み、う……?」




俺が眠る反対側。

左腕全体を隠すように包帯が巻かれ、俺にされているように酸素マスクと生命維持装置が置かれ。


涙を流しながら静かにまぶたを閉じつづける、俺によく似た顔。



意識なく目を覚まさない双子の妹が、そこにはいた。



< 351 / 364 >

この作品をシェア

pagetop