Rain shadow─偽りのレヴェル─
「ははっ、俺は瀧を応援するよ」
「…は?そこは親友の俺だろ」
「悪いな綾羽。たぶん翠加もかわいい弟を応援してるだろうし、俺って瀧の義理の兄貴的な立場でもあるから」
「……」
嬉しそうな顔をしてマフラーに口元を埋める瀧の頭をぽんっと叩く。
お前はきっとこれからもっともっと強くなって、それに加えて誰よりも優しい男だから、深雨の兄貴としても安心できるところがある。
まぁいちばんは俺より優れてる綾羽に妹を渡すっていうのが、シンプルに嫌ってだけ。
「あの、爽雨さん、」
「どうした?」
「おれ、必ず深雨さんを幸せにします」
約束します、とはもう言わない。
だから俺も約束だぞ、は言わない。
約束したから守る、ではなくて。
約束をしなくても守る、そんな人間になりたいと瀧は心に決めたらしい。
「…そうだな、そのときは深雨と“一緒に”幸せになれよ瀧」
「…!はいっ」
「ねえ、俺を置いてしれっと優しい未来を描かないでもらっていい?
そんなの素敵なストーリーのフラグ立てにしかなってねぇんだよ」
「…綾羽、お前ってそんなツッコミ的なポジションだったっけ?」
「……俺が知るか」