Rain shadow─偽りのレヴェル─
聞こえてるだろ、深雨。
俺たちの声、ちゃんと聞こえてるだろ?
それは俺がよく知ってるから、眠ってるお前が笑ってるのも分かるんだよ。
「…ごめんな深雨。お前にたくさん背負わせた、」
俺によく似た顔立ちは変わらないが、あんなに伸ばすと言っていた髪はバッサリと短くなっていた。
それは俺になるため、妹が決めた覚悟。
見るたびに言葉にならない気持ちが浮かんで、兄として申し訳ないなかでも感謝を伝えるようにそっと撫でる。
「母さんと父さんのことも…ひとりで抱えて苦しかったよな、」
俺が目を覚ましてからの家族は、俺が知っている家族ではなかった。
母さんは精神がおかしくなって、父さんは出て行ってしまっていて。
父さんは今後も仕送りをしてくれるとのことだが、彼自身は家族と離れての生活に落ち着いている部分があるらしく。
今までのような形に戻ることは無いんだろうと、息子ながらに思う。
「深雨、母さんは深雨こと、“生きてる”って思えてるから」
深雨を死んだことにして、記憶を自分の良いように組み替えてしまっていた母さん。
ようやくひとつひとつを受け入れて、カウンセリングに通いながら少しずつ元の母親に戻ろうとしている現在。