Rain shadow─偽りのレヴェル─
「……ふ…っ、」
まるでそれは、小さな鈴がコロンと転がった音。
その音が男だけで駄弁る病室に響くことは中々ない。
だから笑っていた俺たちは一斉にしてピタリと止まって、揃って目を開いて顔を合わせて。
「……、っ!」
俺だって最初は指先しか動かせなかった。
だからいちばん最初に反応したのは、その手を握っていた綾羽だった。
「っ……!!」
ガタッと椅子から立ち上がって、様子を覗き見る。
瀧も俺も、すぐに同じように影を作った。
「…み、う……、」
そしていちばん最初に涙を流したのは意外と泣き虫な瀧、よりも。
泣き虫な妹の兄である俺───よりも。
「─────……おに……ちゃ…、…いき、てる……?…いき、てる……っ?」
信じられないものを前にするように。
これほどなく目を開いて、次第にどんどん歪んでいく妹。
「っ、ぁぁぁ…っ、うぁぁぁぁーーー…っ」
その泣き声がすべてだった。
怖かった、苦しかった、つらかった。
お兄ちゃん、お兄ちゃん───、
涙に乗せてぜんぶが伝わってくる。
そんな変わらない姿を目にした途端、俺からも同じように流れた。