Rain shadow─偽りのレヴェル─




笑顔というものに慣れていない表情の固さが隠しきれていないから。



「だって爽雨さんはおれにお礼なんか言わない人でしたから。
なんか…新鮮っていうか、面白いなって」


「……そうだった…、でもこれからは言うよ。お礼はやっぱり大切だし、」


「くっ、はは、…やべ、止まんないです、」



え、いまの返事、そんなに面白かった…?

余計に笑っちゃってるみたいなんだけど…。



「瀧は…どうしていつもマフラー巻いてるんだっけ、」


「……、」



笑い声を止めてしまった質問に、これは聞かないほうが良かったかもしれないと恨みたくなった。

人は誰しも隠し事のひとつやふたつはしているものだ。

安易に他人の心のなかに踏み込むことは不躾とも言う。



「あっ、ごめんね…!言いたくなかったら、」


「傷が、あるんです」


「…傷…?」


「はい、ちょうどここに気持ち悪い傷が」



鱗模様のマフラーをぎゅっと握ったViperの総長。


それは喧嘩で付けられたものだろうか。

彼は中学生の頃から有名だったと、そしてRain shadowに最年少で幹部入りした人間だから。



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