Rain shadow─偽りのレヴェル─
「それに下っぱのあんなのは痴話喧嘩に過ぎない。あんなもん日常茶飯事、いちいち数えてたらキリねぇよ」
「……だとしても、それを救ってのRain shadowじゃないの…、」
ドガッ…!!ドゴッ!!
鈍い音は今もずっと響きつづけてる。
ここでじっと待っていたとしても、狐は山から降りてこないから。
「どんな小さなことだとしても、見落としてたらいつか本当に無くなっちゃうんだよ」
気づいてからじゃ遅いの。
どんなに毎日近くにいた家族だとしても、気づいてあげられなかったことがたくさんある。
その後悔を消そうとしても、本人は高いビルの屋上から飛び降りてしまって。
「…綾都、僕は前に言っただろう」
わたしが恐怖に怯えていると思っていたんだろう。
だから顔を上げてニッと笑いかけた仕草に、誰よりも目を見開いていた。
「僕が必ずこの反乱を止めてみせるって。それに、僕にはお前がついてるんだ」
「───…」
彼がどんな顔をしていたか見るより先に、わたしは目の前の薄汚い光景へと駆け寄った。