Rain shadow─偽りのレヴェル─
そんなわたしを掴んでいた胸ぐらの腕を、最高司令塔である男の手が掴んだ。
ギリギリギリと力を加えられているのか、わたしを掴む男の顔は見る見るうちに苦しそうになってゆく。
「…大丈夫、余計な手出しはするな」
わたしの静かな声に、その手は離れた。
その名前を出さなかったのは、出せばわたしはまたあなたに助けられてしまうからだ。
お兄ちゃんに対してしなかったことをわたしにするのは辞めてほしい。
だってわたしは水本 爽雨だ。
あなたがそんなことをすると、爽雨じゃなく深雨が出てきてしまう。
「ここは潔く去れ。あとを引けば引くほどお前らが不利になるって分からないのか」
「はは、なんだよ?どうなるってんだ…?」
「……僕らはRain shadowだぞ」
「っ、……チッ!!」
浮いていた身体は元に戻って、バタバタと逃げていく足音。
ふう……、なんとか行った…。
「大丈夫…!?どこか怪我は…!?」
はっと気づいて、すぐに横たわる存在へと駆け寄って。
私服姿のその人は私より大きい背丈で、銀色の髪でぼさっと目を隠すように、よく見るとメガネをかけているようだった。