Rain shadow─偽りのレヴェル─
「……どうして僕なんかを助けてくれたんですか、僕なんか…ただの下っぱなのに」
「そんなの関係ない。目の前で傷ついてる人を放っておくほうがずっとずっと難しいんだよ」
「……あなたは、戦わないんですか、」
それは殴ったり蹴ったり、そういうもので黙らせないのかってことだろう。
さっきの場面で、もしそれをわたしがしたとしても、確実に返り討ちに遭っていた。
でももしわたしが戦える強さを持っていたとしても、わたしは絶対それを選ばない。
「武力がすべてじゃない。僕は、必ず話し合いと思いでみんなを救ってみせる」
「…思い…?」
「うん。ここ、…心だよ」
あなたにもついているでしょう?
命あるものみんながひとつずつ持っている特別なものだ。
もしお兄ちゃんが話し合いだけでは解決できなかったのなら、わたしはそこに“心”を追加させる。
「───…ふっ、へんなの」
「……え、あなたは、あっ、」
そっと背中に手を当てて立たせようとすれば、わたしから逃げるように去っていってしまった。
一瞬しか見えなかったけれど、思ったより怪我はしていないみたいで。