Rain shadow─偽りのレヴェル─




それに最後ちょっとだけ聞こえた声は聞き覚えがあるような気がしたのだ。


気のせい……?

でもあの生徒は朱雀の人間だという確信だけは不思議と持っている。

何よりあの髪色、どこかで見覚えが…。



「…よし…、なんとか守れた、」



早く助けることができてよかった…なんて思う心とは裏腹に、なぜか身体はペタリと座りこんでしまって。

どうしよう…ちからが入らない…。



「……っ、」



カタカタカタと小刻みな震えを自力でも抑えられないのは、まだ完全には爽雨になりきれていない証拠。


こわかった、どうなるかと思った。

胸ぐらを掴まれて身体が浮いて、もしあのまま投げられていたら…って。



「立って、…ほら、立たなきゃ、」



言い聞かせるだけで身体が動いてくれたらいいのに。

こういうときはいつもお兄ちゃんが手を引いてくれたなぁって、そんなことを思い出す。



「───みう。」



聞こえたのは、お兄ちゃんじゃない声。


それはわたしの本名だ。
最近はずっと呼ばれなかったわたしの名前。

学校でも家でも呼ばれなくなって、わたしという存在は死んだことにして。



「…ぼくは……、爽雨だ、」



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