Rain shadow─偽りのレヴェル─
「も、もうひとつは…?」
「───深雨に言われて止めらんなくなりそう」
「っ…、」
その目だ、その目はだめ。
わたしは彼のそんな目が苦手だ。
その目で見つめられてしまったら、身体が言うことを聞いてくれなくなる。
と思ったら、ぽすっと倒れこんでくるみたいに身体を預けてきた。
「俺とふたりのときは深雨でいろって。そうしねぇと…本当のお前がいつかマジで消えそうで怖いんだよ、」
「……うん」
このひとは、やさしいひと。
いちばんにわたしのことを考えてくれているんじゃないかって錯覚しそうになる。
「…Rain shadowの最高司令塔さんにも怖いもの、あるんだね、」
「あるに決まってる。基本お化けはむり」
「…ふふっ、」
幽霊じゃなく、“お化け”って言うところ。
そこに彼の本当の人柄が溢れているような気がした。
「じゃ、じゃあ…名前は?」
「なまえ?」
「…うん。なんて…呼べばいい?ふたりのとき、」
崩された制服をゆっくり直してくれる。
そんな仕草ひとつ取っても目を奪われてしまうのだから、この人は何者なんだろうって思うときがある。