Rain shadow─偽りのレヴェル─
でも、もしそうなら彼はこんなにも穏やかな顔はしていないはずで。
まずはViperの総長に聞いてみることにした翌日。
「おれも実はそこまでみんなと関わってるわけじゃなくて、」
「え、そうなの?」
「はい。…爽雨さんとふたりでいるときが多かったです」
あ、なんかちょっと分かるかも。
瀧といると落ち着くっていうか、やっぱりかわいい弟って感じで。
気をつかわなくていいからラクでもあったんだと思う、お兄ちゃんも。
「…あ、でも佐狐先輩は要注意ですよ」
「……あー、それはもう知ってる」
「あのひと、ほんとなに考えてるか分かんないんで」
だからお兄ちゃんも“あいつ”呼びしてたのかな。
相手は3年生の先輩だけど、それはもう容赦なくタメ口で生意気に接してたんじゃないかなぁ…。
「あの男は……化け狐ですから」
「……化け狐、」
じゃあ誰かに化けてだまくらかしたりするってこと…?
見破れるかな……、そのとき。
「…すみません、ろくな情報持ってなくて、」
「いや、ありがとう。んー、じゃあ、瀧のこと教えてよ」
「…おれ…ですか、」
「うん。好きな食べ物、好きな季節、嫌いな教科、なんでもいいんだ」