Rain shadow─偽りのレヴェル─
霊池 仁とは、今のところいちばん関わりを持っていない。
けれど反乱側ではなかったから味方意識はあって、それでいて無口だとも聞いていたからとくに警戒心はなかった。
それでも優しすぎる、と。
「それでいちばん残虐なのが赤矢ね」
「……え、」
「あいつ、覚醒すると自我失って味方にすら手かけちゃうから」
覚醒、それは奴のタガが外れてしまったときだと。
そしてそれが出ると2日は寝込むって。
だけど“残虐”というイメージはなかった。
いまも脳内にある人懐っこい関西弁が感覚を麻痺させてくる。
「次に綾都くんはね、たぶんいちばん秘密いっぱい」
「…それは僕も、思う」
「あの人が自分の話を誰かにしてるとこ、見たことないもん俺」
でもきっと、お兄ちゃんにはしていたはずだ。
だって彼は最初、誰ともつるまないような男だったと。
それがこの学校を牛耳る組織の最高司令塔になるなんて、それくらい参謀である男と意気投合したからに決まってる。
「残る最後は瀧だけど、」
「瀧はすごく可愛くていい奴だよ」
「まじで言ってる?」
「え…?」