Rain shadow─偽りのレヴェル─




とたんに空気がガラッと変わった。


にこやかだった笑顔も消えていて、彼は本当はそんなにも鋭い目を持っていたんだと。

夜目も利く、キツネの目だ。



「あいつがいちばん危ないんじゃない?…俺が知るかぎり」


「……」



ここ数日でいちばん驚いたかもしれない。

だってRain shadowの幹部の中で、いちばん“危ない”という言葉から遠い存在だったから。


情報というのは偽りばかりだと、けれど口答で知らされるものもどこから本当で嘘かは分からない。

だからこそ正しい目を持たなくてはいけなくて。



「だって毒蛇だよ?毒持ってんだよあいつ。気づかないうちにじわじわきてて、最後はかなり残酷な結果。毒ってそんな感じじゃん」



この男は化け狐だから、それさえ嘘かもしれないということ。


だってあの日、蛇島 瀧が首についた傷の話をしてくれたとき。

そのあと頭を撫でた瞬間の照れた表情。
わたしといるときの優しい目。



『…おれは、あなたとこうして話す時間が…好きです、』



それが嘘だと思うことは、水本 爽雨としても間違っている行動だ。



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