Rain shadow─偽りのレヴェル─
そんな生意気な後輩を叱ることなく、困った息を軽く吐いた彼もどこか柔らかい顔をしていた。
「んで、どしたの」
「ぼ、僕がいるときに……隣の部屋に女を連れ込むのだけは…やめろ、」
先ほどまでとは違う意味でしーんと、空気が凍った。
溶かすように「はははっ」なんて軽い笑いがあとから聞こえる。
わたしはどうにか平常心を保ちつつも、きっと顔は真っ赤だろうからそっぽを向いた。
「わっ…!な、なんだよ、」
ずいっと近づいてくる佐狐。
やっぱり誰を見ても整ったルックスをしているから、そこに混ざってRain shadowとして生きるのは気が引ける部分もある…。
「…佐狐、」
「なぁに」
「おまえの銀髪……すごくきれいだ、」
「……」
狐の尻尾みたいにサラサラしてる。
まるで白い狐だ。
神社の前に構えているような。
「なら触る?隣の部屋でならもっと色んなとこ触らしてあげるよ」
「へ?」
すると、ずっと横に伸びていた目が縦に動いた。
切れ長の瞳は赤矢とは正反対だ。
赤矢はわりと童顔に見えるときもあって、佐狐は逆に大人っぽくて妖艶。
「君もそーいうの、興味あるんでしょ?」