Rain shadow─偽りのレヴェル─
聞きたいことが上手くまとまらない。
なんの話をしているのかと、今のわたしはそこから分かっていないから。
言葉を詰まらせたわたしを見て、赤矢は悔しそうに続けた。
「オレだってそうや、それはどちらかを庇う行動にしかならへんから。…だったら何もせえへんほうがマシやろ」
教室内は静まり返っていた。
このクラスは半数以上がRavenだから、そんな総長の珍しい姿を前に動揺を隠せられないのだろう。
それはわたしも同じ。
赤矢は誰と誰のことを言っているんだろう。
少なくとも2人以上はそこに入っていると、わたしは解釈した。
「結局は最終的にぜんぶ崩れる未来しか見えへんねんオレには。…そんなの悲しいやんか」
もしかするとカラスの目の良さは、彼らの中でいちばんかもしれない。
みんなが隠そうとしているところを高い場所から見ることができてしまうから。
きっと見たくなくても、見えてしまう。
「っ、赤矢!必ず僕がぜんぶを救ってみせる…!ぜったい誰ひとり欠けさせない…、
お前が戻ってきたいと思うようなRain shadowを作るから…!!」
切なそうにはにかんでから、1羽のカラスは飛んでいった。