Rain shadow─偽りのレヴェル─




「もしかして誰かから果たし状とか送られでもした?」


「……、」



背中を向けた足取りは、ピタリと止められてしまった。


やはりこの男なの、と。

わたしはドクドク脈打つ心臓を抑えながら振り返る。



「…佐狐、僕はおまえが一番わからない」


「だから言ったじゃん。俺は引きつけ役なだけだって」



いや、わからない。
だけどいちばん怪しいの。

赤矢が言っていることがいちばん当てはまってしまうのが、この男でもあるから。


どうして果たし状という単語を出したの。

たまたま?それともわざと?

イマドキ果たし状なんか古くない?なんて言うような人なのに、あなたは。



「なら、佐狐は誰かの命令の下で動いてるっていうのか、」


「…どうだと思う?もしかすると自分の意思でもあるかもしれないよ?」



ほら、わからない。

どうしてこの男はいつもわたしを試すような言い方をするの。



「ぜんぶを理解したとき悲しい思いをするくらいなら、秘密だらけの今を楽しもーよ爽雨くん」



そういうところが化け狐と言われるんだろうと思った。

このひとは誰に化けていて、なにを化かしているの。

誰を隠すためにあなたは化けているの。



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