Rain shadow─偽りのレヴェル─




「なんか元気…ないですか、」


「……そんなことないよ」



あぁ、今の返事は困らせちゃうね。

ごめんね瀧。

でも瀧の前だからわたしも弱音を吐けるのかもしれない。



「佐狐先輩から聞きました。爽雨さんが狙われてるって」


「……」


「おれ、なにか爽雨さんの力になれることはありませんか」



その言葉だけで十分だ。

ほんとうに十分だから、今だってどうして落ち込んでるんだろうって気持ちになる。



「大丈夫、ありがとう瀧」



でも不思議だね瀧。

あんなにも要注意人物で化け狐だと教えてくれたのに、その人と情報を交換してるなんて。


……って、そんなふうに八つ当たりしたって仕方ないのに。



「頼りないかもしれないですけど…おれ、あなたの力になりたいんです」


「…瀧、」


「おれはずっと爽雨さんの味方ですから」



返事をする代わりに、そっと手を伸ばす。


サラサラと揺れる漆黒の髪。

久遠 綾都とは違う綺麗さを持つ髪質だ。

彼の黒髪は目を惹かれるもの。
瀧の黒髪は手で触れたいと思うもの。



「わっ、ちょ、」



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