若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
口もとを押さえ目を閉じる。とにかく落ち着いてと自分に言い聞かせ、ベッドを出た。

慶にとっては女性とキス&ハグなど日常茶飯事なのかもしれない。

美夕だけ浮かれているのも恥ずかしい。

(冷静に。冷静な対応を……)

そう言い聞かせながらリビングで朝食の準備をしていると、やがて慶も起きてきた。

目があって一瞬どきりと身構えるが、普段通りになるよう自然な自分を演じる。

「トーストとスクランブルエッグ、食べられそう? 食欲がないなら、ヨーグルトとフルーツだけ出すけれど」

「コーヒーさえあればいい」

「じゃあ、ヨーグルトとフルーツとコーヒーで」

「……人の話を聞いていたか?」

慶はリビングを出て顔を洗いに行く。

ダイニングテーブルにヨーグルトとフルーツを置いておくと、戻ってきた慶は食卓を見て物言いたげに笑った。強引だなと言いたいのだろう。

「今、コーヒー淹れるから待っていて」

「自分でやる。お前もコーヒーでいいなら、ついでに作る」

「……じゃあ、お願いするわ」

ふたり、キッチンに並んで朝食の準備をする。

気まずく思っているのは美夕だけなのだろうか。とても慶の顔を覗き込むことができない。

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