若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
コーヒーメーカーが起動して、ミルががりがりと音を立てる。

コーヒーの抽出が終わるまでの五分間で、美夕は自分の分のトーストとスクランブルエッグ、簡単なサラダを用意した。

美夕は自分の分の料理を、慶はふたり分のコーヒーを持ってダイニングテーブルに向かう。

揃ってチェアにつき、コーヒーマグを口もとに運ぶ。挽きたての豆の香ばしい香りに、美夕の心はやすらいだ。

「いい香り」

「よかったな」

慶はなんだかんだ言いながらも、ヨーグルトを口に運んでいる。

「……本当に嫌なら、食べなくてもいいけど」

「急に弱気になってどうした」

「一応、意見も聞いてみようと思って」

「脳腸相関、なんだろう? 妻の方針に従っておく」

そう微笑をたたえ、今度はフルーツに手を伸ばす。イチゴにかぶりついた唇が、妙に妖艶に見えた。

彼を眺めていると嫌でも昨夜のことを思い出して拍動が増す。

「あの、慶」

「なんだ」

「……覚えてますか?」

「覚えてない」

主語のない問いにしらっと答える慶。

(絶対に覚えているじゃない……)

美夕は心の中で盛大なツッコミを入れる。

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