若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
慶はドアの前で足を止め、顎に手を添えながらゆっくりと振り返った。

「そうだな……ルビーのネックレスでもつけていくか?」

不敵な表情で言い置き、リビングを出ていった。

ルビーのネックレス――懐かしい記憶が蘇り、胸が小さく疼く。

(初めて会った日のこと、覚えてくれていたのね……)

まだ慶が十代の青年だった頃。子どもだった美夕に、とても優しく接してくれた彼は、王子様みたいに見えたことを覚えている。

(今は王様ね)

あれほど優しくエスコートしてくれることは、もうないだろう。

美夕の首にネックレスをつけて「とてもよく似合っているよ、お姫様」とにっこり微笑んでくれる姿なんて、今の慶からは想像もできない。

なにより、大人になった今、あんなにもダイヤとルビーがごろごろ繋がったネックレスを身につけたいとは思わなかった。

(パーティーのあと、父にネックレスの値段を聞いたら『億は下らないんじゃないか』って言われたのよね)

ダイヤとルビーの値打ちもさることながら、何百年も前にヨーロッパで作られた由緒正しきネックレスのようだ。

そうとは知らずつけていたなんて、ゾッとする。

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