若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「似合うのは間違いないが、若さが際立つ。見た目も実年齢も若いんだ。軽く見られるのは嫌だろう。もう少し落ち着いた色の方がいい」

ただ似合うか、綺麗か、それだけではない。慶は美夕の見せ方を考えているのだと気づき、ハッとする。

「同じパステルカラーでも、ライラックなら淑やかに見えるだろう」

慶の提案に、デザイナーは色味の異なる布見本、それも紫系のものを選び取ってテーブルに並べる。

「でしたら、アメジストカラーなどいかがでしょうか。深いお色みが上品に映るかと」

「少々色がきつくないか? あまり派手なイメージも与えたくない」

「でしたらシンプルにピンクベージュなどは。先ほど奥様にお選びいただいたシャンパンピンクより、ぐっと茶色みが強く落ち着いた印象でございますので、肌の白さもよく映えるかと」

「そうだな。美夕はどうだ?」

尋ねられ、むむむっと顎に手を添える。

色の好みではなく、どう見られたいか、慶の隣にいてどう映りたいか、そう考えてみると、美夕が選んだ色はこれまでとはまったく違っていた。

「この色はいかがでしょう。ミントグリーン」

スカイブルーとライトグリーンを混ぜ合わせ、グレーを足したような色。

色だけ見れば地味だが、生地には真珠のような優しい輝きがあるので、華やかに見えるだろう。

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