若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「あの男はなんなんだ。知ったような口を利いて」

(やっぱり怒ってた……!)

上着を脱いだ美夕は、ドレス姿のまま慶の隣に腰かけ、なんとかなだめようとする。

「あの、ごめんなさい。私が青谷くんに別居していると言ってしまったから」

「あの男と付き合っていたのか?」

「ち、違うわ!」

まさか本気で疑っていたとは。美夕は慌てて首を横に振る。

「だいたい、私の行動は桐江さんに監視させていたんでしょう? 男の家に泊まり込んだりしないよう見張ってたって、あなたが言ったんじゃない」

慶は美夕が不貞など働いていないと、誰よりわかってくれていたはずなのに。

しかし、慶は気まずそうに目を逸らす。

「ずっとお前を見張っていたわけじゃない。学校の中や会社の中でなにをしていようと、俺は知ることができないし、手出しもできない」

その声が、妙に自信なく聞こえて、本当に慶の口から出てきたものかと疑いたくなった。

いつも威厳に満ちていて、揺らぐことのない慶とは思えないくらい――弱気だった。

「人の心は掌握できない。お前をあの家に閉じ込めたのは俺だが、心まで閉じ込めておくことはできない」

「閉じ込めるだなんて……!」

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