若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「そういえば、約束していたな。結婚生活を続けるか、離婚するか、もう一度問うと」

「……今さらそんなことを聞くの?」

周囲の人々に慶を紹介した以上、逃げる道などないのに。

そもそも、もう美夕は慶から逃げ出したいとは思っていない。

もっと彼の近くに踏み込んでいきたいと、そんな希望すら抱き始めている。

「まだ離婚する気はあるか?」

「わかっているくせに。わざわざ言わせるなんてずるいわ」

縋るような目で見つめて、退路を断つのもずるい。

美夕が顔を上げると、慶の余裕のない眼差しが近づいてきて、その唇を欲しがった。

「悪かった。もう二度と聞かない」

そうささやくように言い募り、美夕の唇を塞ぐ。強く抱き寄せられ、同時に美夕も慶の首筋に手を回した。

慶は美夕の体を自分の上に乗せ、大きなソファの上に転がる。

ようやくこの身を慶が受け入れてくれたと実感して、美夕は安堵を覚えた。

(ああ、私は、慶に閉じ込めてほしかったのね)

これまでたくさんの自由と選択肢を与えられてきたが、一度も妻でいてほしいと懇願されたことはなかった。その身が欲しい、愛しているとも。

自分は女性として、妻として、求めてもらいたかったのだとようやく気づく。

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