若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
慶へ抱いていた憎しみは、自身への不甲斐なさだったのだ。慶を虜にするほど美しい女性であればよかったのに、見た目も年齢も足りなかったから。

「慶は? 私でいいの?」

二度、三度と口づけを深めながら尋ねる。

「最初から、お前以外見ていないと言っているだろ」

「全然言ってないわ」

「言った。六年も女と寝てないって」

「……嘘だと思ってた」

思わず答えると、慶が耳朶にかぶりついてきた。美夕は「きゃんっ」と子犬のような声を上げる。

「お前が大人になるのを待っていた。そろそろ役目を果たしてもらおうか」

美夕の顔が真っ赤に染まる。男性経験は少ないが、その言葉の意味がわからないほど子どもではない。

「私、初めてなの。ええと……大丈夫かしら」

「十八の頃の、あの勢いはどうした」

慶がくつくつと笑う。下着姿で夫の帰りを待っていた日のことを思い出して赤面する。

「あのとき抱いてくれなかったから、私、すごくこじれたのよ。六年間、あなたと離婚することしか考えられなかった」

「それは悪かったな」

慶は悪びれない謝罪をすると、ソファから起き上がり、美夕を横抱きにした。

美夕ももうじたばた暴れたりはしない。観念して運ばれるのを待つ。

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