若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
第五章 不器用な寵愛
朝五時。目を覚ますと、隣に慶が眠っていた。
服は着ておらず、昨夜のまま、艶やかで筋肉質な肌を晒している。
美夕自身も服を着ていないことに気づき、慌てて纏うものを探した。
床のドレスを拾おうと手を伸ばしたとき、反対側の手を掴まれる。
「行くな」
寝ぼけまなこの慶が美夕の体を引き寄せ、自身の胸の中に押し込んだ。
「あの、慶? 月曜日よ。シャワーを浴びて支度しないと」
「まだ五時だぞ。もう少し抱かせろ」
慶の腕が美夕を逃すまいと絡みついてくる。逞しい腕に抱きとめられ、ひと晩寝て落ち着いたはずの鼓動がまた騒ぎ出した。
しかし、背後ですぐに寝息が聞こえてくる。どうやら抱かせろというのは、抱き枕が欲しかっただけらしい。
気が抜けた美夕はふうと息をつく。
抱き枕にしたって、求められるのは悪くない気分だ。
(昨夜は、妻として求めてもらえたし……)
思い出すだけで充足感に包まれる。愛されたという事実があるだけで、世界が明るく見えてくる。
(なんだか、すごく幸せ……)
慶の唯一の女性であることが、こんなにも嬉しく感じられるとは。
美夕の中ではっきりと、慶への愛がかたちになる。
いつまでもこの腕を解いてほしくないと願った。