若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
ふと真剣な顔になり眉をひそめた慶に、花柳は重い声で説明する。

「遺書を受け取った知人が、どう扱えばいいだろうかと僕に相談してきた」

「遺書にはなんて?」

「勅使河原先生の指示で不正を働いたが、トカゲのしっぽ切りにあった。自分が死んだら口封じにあったと思ってくれ、と」

慶は遺書の内容に表情を歪める。裏でなにかやっていそうな男だとは直感していたが、やはり不正を指示していたようだ。

それどころか口封じとは――真偽のほどは確かではないが、穏やかではない。

「その遺書、現在は?」

「マスコミ一社と協力して、遺書を公にするはずだったんだけどね。偶然、泥棒に遺書を盗まれてしまったんだって。マスコミ側からもこれ以上は関わりたくないという申し出があって、計画は立ち消えた」

「……まさか議員が双方に金を積んだのでしょうか」

「あるいは、脅しをかけたか――真相は藪の中だ」

花柳がひょいと肩を竦める。正義感の強い花柳は真実を公にしたかったに違いない。悔しい思いをしただろう。 

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