若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「勅使河原議員とは、ちっちゃな私怨もあるよ。議員の娘が、美夕と同じクラスでね。よくいじめられていた。僕も保護者会でいろいろ言われたなあ。芸能人気取りとか、品がないとか」

「……もう勅使河原議員のことは充分わかりました。縁談は断ります」

そもそも、北菱家の長男として、黒い繋がりを持つわけにはいかない。議員の素行が怪しいとなれば、丁重にお断りしなければ。

そのときはまだ慶も花柳も、勅使河原議員の非情さと横暴さに気づいていなかった。



慶はその後、勅使河原議員に縁談の断りを入れた。

事態が急展開したのは三カ月後だ。慶の耳に、検察が花柳夕輔を捜査しているという情報が飛び込んできた。

有力なネタも上がっており、起訴目前であるという。

すぐに慶は事実を確かめるために奔走し、背後に勅使河原議員とある特定の検察官との間に癒着があることを探り当てた。

慶が花柳に警告しに向かうと、すでに花柳はその事実を知っていた。

自宅の書斎で大きな執務チェアに座り、穏やかに微笑む。達観したようなその表情は、すでに罪を被る覚悟を決めているように見えた。

「実は以前、亡くなった秘書の件について、勅使河原議員に揺さぶりをかけたことがあったんだ。議員のしたことが、どうしても許せなくてね。もともと仲は悪かったんだけど、追い打ちをかけてしまったのかもしれないなあ」

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