若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
そう言って慶は美夕の手を握る。

子どもではなくレディ――そう言ってもらえたことが美夕はとても嬉しかった。頬がほんのり火照るような感じがする。

「そういうことかい。ご両親に叱られないよう、ほどほどにね」

父親がなにを心配しているのか、美夕にはわからなかったが、正直そんなことはどうでもいい。こんなに素敵な王子様が自分のそばにいてくれるのだから。

慶は美夕を覗き込み「もう少しだけ俺と一緒にいてくれる?」と柔らかい笑顔を向けた。

「はい!」

慶は会場中を練り歩き、招待客に挨拶をした。客は美夕とそのネックレスに興味に示し、話は大いに盛り上がった。

客は慶が子どもと一緒にいることもあって、長話をせずに解放してくれる。中には、ふたりでゆっくりと話したいと持ちかけてくる女性もいたが――。

「失礼。今日のパートナーはこちらの愛らしいレディですので」

そう言って慶は女性をあしらい遠ざけた。

美夕としては、寄ってくる綺麗な女性たちよりも自分を優先してくれたことが誇らしかった。

結局は父がしていたのと同じ退屈な社交をさせられていたにもかかわらず、まったく苦にならなかったのは、慶のそばで、ずっと彼を見つめていられたから。彼の力になれたからだ。

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