若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「あの男がどんな人間か、影でどれだけ悪事に手を染めていたか、俺がきちんと把握していれば」

「なに言ってるんだい。僕の不始末だよ。勅使河原議員に関わりさえしなければ、こうはならなかった。自業自得さ」

慶はソファに深くもたれ、やるせなく唇をかむ。この状況をどうにかする術が、今の慶には見つからない。

「ひとつ心配ごとがあるとすれば、娘のことかな。せっかく大学に合格したのに、辞めなければならないだろうなあ。娘の人生をめちゃくちゃにしてしまった」

花柳が額を押さえる。どんな不測の事態も悠然とかまえていた師が、初めて虚ろげな眼差しを見せた。

「娘さんのことは――俺がどうにかします」

慶の口が自然と動いた。これまで自分を育て導いてくれた第二の父。力になるなら今しかない。

「……ありがとう。君に金を預けておくよ。すまないが、これで美夕と妻を地方に逃がしてやってはくれないかな」

小切手を出そうと引き出しを探る手を、慶は慌てて掴みに行った。やめてください、と前置きし、瞬発的に思いついたプランを口にする。

「美夕さんと結婚させてください」

花柳が目を丸くする。やがて、ぷはっと吹き出すように笑った。

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